超サステナブル素材「床革」
「床革(トコがわ)」とは工房で革の厚みを調節した際に出る、本来なら捨てる部分のことです。
昨今はSDGsに配慮する、サステナビリティを追求するといったことが企業にも求められていますが、そもそも革自体が食肉の副産物であり、鞣しの方法も植物タンニンを使った「土に還る革」です。さらにさらに捨てるはずの床革を使うとなればそれはもう素晴らしい取り組みと言えるのではないでしょうか。
実はb3Laboでは、こういった風潮が高まる以前から床革を活用した商品を生み出してきました。私たちに限らず、革でものづくりをする方々は、かつて命だったものへの敬意を忘れず限界まで活用してあげたい気持ちの方が多いと感じます。
今回はその床革のことや、床革を活用した商品についてお伝えいたします。
床革が生まれる理由
問屋さんから仕入れた原厚の革は1mm~3mmもの厚みがあり、そのまま使うと「厚くて折れ曲がらない二つ折り財布だったもの」や、「ウェイト・トレーニングに最適なリュック」が出来てしまいます。
ですから、強度と薄さが折り合う厚みに調整するのです。
特に、b3Laboが惚れ込んでお財布の内装などにも使っている、栃木レザー社の革。
もともと一枚革のベルト用に開発され、なんと3.5mmもの厚みで非常に手間と時間をかけて作られる革です。これをカードポケットなどの1mm以下の薄いパーツに使うのですから、それはそれはしっかりとぶ厚い、立派な床革が残ります。
ただ、革の強度は銀面あってこそ。
床面だけでは革本来の強度は望めませんので、例えばバッグの試作には使えても実際の製品には使えません。きちんと強度を吟味した上での活用です。
b3Laboの床革の特色
通常はドラム(太鼓とも呼ばれます)で原皮とタンニン液を回して、なめしの時間を短縮しますが、栃木レザー社ではタンニン液に浸け込む方法を取っています。
その上さらに時間をかけてじっくりとオイルを浸透させた革を使っている訳ですから、その床革も素晴らしいものです。(あんなぶ厚いものをわざわざ!?と、時々我に返ります)
特長 | |
栃木レザー(浸け込み式) | 繊維がほぐされず、ハリとコシが保たれた目の詰まった革 |
ドラム式 | ドラムで揉まれ、繊維がほぐれ扱いやすい柔らかさが生まれる |
この特性は、もちろん床革にも引き継がれます。むしろ、床革にこそと言っても過言ではありません。
繊維がほぐされていないため、銀面(革の表面のつるりとした層)を失ってもなおしっかりとしたハリとコシを保っています。
さらに時間をかけて染み込んだオイルは、床革の奥まで浸透しており、しっとりと柔らかな手触りをもたらします。床革、革ウラにありがちなざらつき、ボソボソ感は皆無です。
良い革を使わせてもらっているからこそ、床革までも活かしきりたい。
通常は貼り合わせベルトの芯など見えない部分に使われる床革ですが、
「こんなに素晴らしい床革に縁の下の力持ちだけやらせるのはもったいない」と考えるのは当然の流れでした。
1)過去の名作「ペットマトカバー」
市販の水耕栽培キットと一緒に使う、ペットボトルを覆う遮光カバー。
光を防いで根っこを守ると同時に、水が緑色になるのを防ぎます。
残念ながらわたくしが入社した時点ではすでに廃番商品でしたが、自宅でも植物を大切に育てていたという職人の作です。
2)床革を使ったコースター
超高密度な銀面はある程度水を弾きますが、床面はよく水分を吸います。
床面を前面に押し出したタイプ、通常製品でははじかれた革を貼り合わせたタイプの2種類が作られました。
3)床革マウスパッド
惜しみなく大判を取れることを活かしたマウスパッド。滑りをよくするために表面を磨いてあります。
4)床革フォトフレーム
作る手間は百貨店のフォトフレーム並み!
カッチリしつつ親しみやすいプロダクトに仕上がりました。
4)雑貨類
パステルカラーの革と、クラフト感あふれる床革を合わせた商品も。
お互いを引き立てるコントラスト、かわいらしさだけではないムーミンの世界観も表しています。
「もったいない」の気持ちを大切に
やれ持続可能な社会だ、活動だと言われる社会になりましたが、わたしたちは特に変わることなく、革を大切に使って商品を作っていくだけです。
クラフトマンにはそういう方も多いのではないでしょうか。
そういった心がけを持っていらっしゃる方々にもわたしたちの商品が届けば幸いです。